2018年2月10日土曜日

守屋純子オーケストラ@渋谷さくらホール





写真は以前のコンサートのものです。





2018年2月9日、守屋純子オーケストラ@渋谷さくらホールを聴いてきました。
メンバーは、
ピアノ・作曲・アレンジ:守屋純子
トランペット:エリック宮城、木幡光邦、奥村晶、岡崎好朗
トロンボーン:佐野 聡、佐藤春樹、東條あづさ、山城純子(b-tb)
サックス:近藤和彦(as)、緑川英徳(as)、岡崎正典(ts)、吉本章紘(ts)、岩持芳宏(bs)
ベース:納浩一
ドラムス:広瀬潤次

コンサートの第1部は、ジャズレコード録音100周年を記念して、過去のジャズレジェンズをトリビュートした作品達です。
1.JAZZ ME BLUES (TOM DELANEY) 
オリジナルディキシーランドジャズバンドの初録音やビックス・バイダーベックの録音で有名なナンバーですが守屋純子のアレンジはクラシカルな曲をとても自然形でモダンオーケストラナンバーに仕上げています。
木幡光邦(tp)のソロ、岡崎正典のクラリネットが印象的、東條あづさのすてきなスキャットとトロンボーンソロが決まる。
2.DUKE’S MOOD (JUNKO MORIYA)
DUKE ELLINGTONNのビターなオーケストレイションの雰囲気を美事にあらわしたリッチなサウンドが魅力的な曲
佐野聡(tb)、近藤和彦(as)、吉本章紘(ts)のそれぞれ熱いソロ!
3.TRANE’S MODE (JUNKO MORIYA) 新曲
JOHN COLTRANEの至上の愛を意識したと語られましたが、インパルス初期から中期の激情的でありながら美しいサウンドがイメージされる傑作曲
納浩一のベースソロで曲は開始します。ジミー・ギャリソンのあの強く硬質なベースを想起させるサウンドで納浩一の超絶技巧のソロが繰り広げられ、続いてアンサンブルがあの最強カルテットをイメージさせるサウンドをくり広げ、岡崎好朗(tp)と岡崎正典(ts)の岡崎ブラザースが美しく心に突き刺さるようなソロを奏でます。
4.CHARLIE (JUNKO MORIYA) 新曲
CHARLIE PARKERの美しいサウンドに主眼をおいたバラードライクな美しい曲
サックスセクションのみの美しいメロディーで曲は開始し、岩持芳宏(tb)、岡崎正典(ts)、近藤和彦(as)、緑川英徳(as)吉本章紘(ts)がそれぞれのPARKER観を示すようなソロを演奏!!
傑作曲!!
5.CARAVAN (JUAN TIZOL,DUKE ELLINGTON)
ジャズオーケストラサウンドがホールに響き渡る快感!!

第2部は、日本画の巨匠・長谷川等伯にインスパイアされた、今回は4曲からなる長谷川等伯組曲です。
守屋純子による各メンバー紹介が終わると、ハッピーバースデイが吹奏されました。何と木幡光邦さんの誕生日だったのでした。ケーキを贈られ満面の笑みでした。
1.MAPLE 楓図壁張付 (JUNKO MORIYA)
智積院(前身は祥雲寺)蔵で有名な作品です。元は豊臣秀吉が夭折した愛児・鶴松のために建立した祥雲寺を飾っていた障壁画。ライバルだった狩野永徳が48歳で亡くなったため等伯にチャンスがめぐってきたと言われている。26歳で夭折してしまう長男・長谷川久蔵や長谷川派一門が総力を結集した作品。この作品にはそういった喪失感や悲しみを癒すような永遠性があると感じています。
守屋純子はピアノトリオで演奏します。エレジーのようにも聞こえる美しい作品です。守屋純子のピアノソロが美しい!
2.MONKEYS IN WITHERED TREE 枯木猿猴図 (JUNKO MORIYA) 
明るいリズムのユーモラスな感じの曲で岡崎正典(ts)と奥村晶(tp)のソロも美事です。
3.TIGER &  DRAGON 竜虎図  (JUNKO MORIYA) 新曲
竜虎図というモチーフからはダイナミックな作品かと思ったらこれが美しい曲で、岡崎好朗(tp)と緑川英徳(as)の静謐で緊張感溢れるソロが印象的でした。
4.PINE TREE 松林図屏風 (JUNKO MORIYA) 新曲
誰もが知っている日本絵画史上最高作の一つ(私見では、もう一つは雪舟の山水長巻)、苦労をともにしてきた妻、長命であれば等伯を超えたであろう26歳で夭折した天才絵師の長男・久蔵と、家族に先立たれて描いた故郷七尾の松林の風景といわれています。郷愁や哀感、孤独、静謐といった感情が鑑賞するたびにめばえます。
守屋純子の作品は、ホーンセクションのコラールような響きから始まり、じっくりと静かな風景をオーケストラで描ききります。

5.HOUSE OF THE WINNER 表家康公「家康公ジャズ組曲より」(JUNKO MORIYA)
守屋純子のピアノソロをヒューチュアして、ゴージャスなオーケストラサウンドに唸りました。

アンコール
Cavatina.(Stanley Myers)映画『ディア・ハンター』のテーマ曲
有名な美しいメロディーをじっくりオーケストラが紡ぎます。
あっという間の2ステージでしたが、オールスターメンバーによる素晴らしいアンサンブルや手に汗握るソロの応酬が素晴らしかった。
今回強く感じたのは、守屋純子の新作のどれもが、普遍的で素晴らしい作品だったこと。どれもが、明日からスタンダードナンバーになりそうな出来映えで、作曲家守屋純子はやっぱり凄いなと痛感しました。
次のステージや新録音が待ち遠しくなります。